「おはなしの知恵」
河合隼雄さんの「新装版 おはなしの知恵」を読んでる。
日本の昔ばなしや世界の民話を紹介しつつ、そのおはなしのコレはこんな意味があるんじゃない?という解説をされていてその解釈がとても面白い。なんで日本の昔話はやたらおじいさんとおばあさんの登場回数が多いのか、ヨーロッパはなんで結婚してハッピーエンドになるものが多いのかというようなお話の背景も含めつつ。
桃太郎や白雪姫などの有名なお話から、日本ではあまり知られてないネイティブアメリカンの神話、ケルト、アイヌなどの民話まで幅広い。半分の人間のお話や両性具有の神様、腕や足が天井からふってくるなど、インパクトがあるお話が紹介されている。もっとちゃんと民話や神話を読もうかな、という気持ちになる。
kindle版もある。
なぜ「おはなし」があるのかについて、最初にこんなふうに書かれている。
おはなしは非合理であったり非論理的であったりするが、主観的な納得を他の人々と共有できるという意味での普遍性をもっている。(中略)人間が自分の人生を、かけがえのない全き人生として生きるためには「おはなし」を必要としている。自分の人生を「おはなし」として見ることができなければ、せっかくこの世に生を享けた回がないのではなかろうか。(新装版 おはなしの知恵/p.11−12より)
村上春樹さんが「村上さんのところ」で、[Q.人はなぜ物語を欲するのか]で、こう答えている。
僕らは何かに属していないと、うまく生きていくことができません。僕らはもちろん家族に属し、社会に属し、今という時代に属しているわけなんですが、それだけでは足りません。その「属し方」が大事なのです。その属し方を納得するために、物語が必要になってきます。物語は僕らがどのようにしてそのようなものに属しているか、なぜ属さなくてはいけないかということを、意識下でありありと疑似体験させます。 人はなぜ物語を欲するのか? - 村上さんのところ/村上春樹 期間限定公式サイト
なんとなく言ってることが共通してる、と思った。
オウムにとりつかれてしまった人たちについて、お二人とも「ハルマゲドンというおはなし」について
ハルマゲドンの話をただ笑っているだけでいいのだろうか。これは「終末」にかかわる「おはなし」である。(中略)秀才とかエリートとか言ってみてもそれは理科系の知識や技術についてのことであって、「おはなし」という点に関しては赤子と同じくらい未熟であると言っていいだろう(新装版 おはなしの知恵/p.14〜p.15)
彼らには「世界には終末があり、それはそれほど遠くない将来に訪れるだろう」という、世界のあり方についての「物語性」が自然に植え付けられてしまったということでしょう。(中略)だから麻原彰晃の説く終末論(ハルマゲドン)がすんなりと抵抗なく受け入れられたのでしょう。 カルト教団に向かった彼らの「物語」 - 村上さんのところ/村上春樹 期間限定公式サイト
なんか通じてるなあ、と思ったら、このお二人は何度も対談されたことがあるのね。
河合は年長の学識者の中で、村上が唯一繰り返し対談した人物。「僕にとっての『小説の意味』みたいなものをきちんと総合的にすっと理解し、正面から受けとめてくれた人は河合先生一人しかいませんでした。『物語』というのが我々の魂にとってどれほど強い治癒力をもち、また同時にどれほど危険なものでもあるかということを、非常に深いレベルで把握しておられる方です。」[117]「河合先生に会うたびに、僕は元気づけられます。ああいう人ってなかなかいないです。」[118]「僕が『物語』という言葉を使って話すときに、その意味をきちんと理解してくれるのは、河合先生ぐらいだった」[119] と語っている。
[117]『夢のサーフシティー』前掲書、読者&村上春樹フォーラム93。
[118]『夢のサーフシティー』前掲書、読者&村上春樹フォーラム65。
[119] 信濃毎日新聞、2008年3月30日付。
対談本もあるし。
私が「おはなし」を読む理由を考えてみると、
- 単純に面白いから
- 現実逃避
- 脳内でシミュレーションしたい
のどれかであり、どれでもあるなあと思った。10から20代は恋愛ものを多く読んでたけど最近めっきり読まなくなったのは、脳内シミュレーションする必要がなくなったからかもしれない。
でもこれは読んでる(笑)
自分のことというより保護者目線で読んでいるのかも。まあ、それはどうでもいい。
日本の神話くらい読もうと思って、最近息子と古事記絵本読んでる。結構面白い。神様の名前が難しいから「イザナギくんとイザナミちゃんは〜」とか言い換えながら。
いざなぎいざなみの話。黄泉の国こわい。
天照大神の話。
スサノオの話。