底なしの貧困
息子の夏休み用の絵本と一緒に借りてきた分厚い文庫「レンタルチャイルド」を読んだ。
インドの貧困についてのノンフィクション。筆者の石井光太さんは'02・'04・'08年に渡印、二人の貧困青年を中心にスラム街の子供やマフィアたちのことを書いてる。以前読んだ「闇の子どもたち」と似たような内容かと思って読み進めたらそれ以上のショッキングな内容だった。
身体を傷つけられたり、自分で目をつぶして物乞いをする子供をはじめ、子供を借りて物乞いをする老婆、捨てられた売春婦、強姦で産まれてくる私生児たち、子供だった物乞いが成長してどうなってくのか…信じがたい内容で、中盤は電車で読んでたのに涙がぼろぼろ出てきてしまった。本の中から悪臭や腐臭が漂ってきそうだった。発展がめざましいインドで、これは本当のことなのか。これはインドだけのことじゃないんじゃないか。貧困ゆえの残酷さを子供が自然に身につけていく、ブラジルのスラムを描いた映画「シティ・オブ・ゴッド」を思い出した。
昔読んだ曽野綾子さんの「なぜ人は恐ろしいことをするのか」という本で、人は生きていくためならどんなことでもする、原因を考えると貧困につきあたるというようなことが書かれていた。この本の内容がまさにそうだ。恐ろしいことをしないと生きていけないからだ。仲間の腐りかけの遺体さえお金をもらう手段にする。
この本を読んで、イソップの「うさぎとかえる」を思い出した。うさぎは肉食獣にねらわれる毎日を厭って集団自決しようとする。すると池ではうさぎの足音におどろいたかえるたちが逃げる。うさぎはかえるをみて、自分たちよりもみじめな存在を知って自決をとりやめる…というような内容だ。下には下がいるというような。
わたしは今、このイソップの「うさぎ」になってるようでモヤモヤして気持ちが悪い。うさぎみたいに「死にたい」と思ってるわけじゃないけど、インドの貧困と日本の貧困を比べてこんな読後録を書いてるのが偽善者っぽい。決して裕福ではないが仕事も住む場所もある。子供はひとりっこだけど健康だし学校も行けてる。日本は死体をひっぱったり、子供を抱いて物乞いをしてる人なんていない。負のループがあるということだけが同じ。一番先に犠牲になるのは子どもだ。
レンタルチャイルド―神に弄ばれる貧しき子供たち (新潮文庫)
- 作者: 石井光太
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2012/10/29
- メディア: 文庫
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