山のあなた
5年生の国語ドリルの中に「山のあなた」という詩が出てきた。
小5の詩なら私にも分かるだろうとたかをくくっていたら全然簡単じゃなかった。これ教科書準拠のドリルなのにな…。
カール=ブッセ・作
上田敏 訳
山のあなたの空遠く、
「幸(さいわい)」住むと人のいふ。
ああ、われひとと尋(と)めゆきて、
涙さしぐみ、かへりきぬ。
山のあなたになほ遠く、
「幸」住むと人のいふ。
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問:この詩の説明として次のうちどちらが適切か
・作者は山のかなたに「幸」を見つけられた
・作者はどこにも「幸」を見つけられなかった
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有名な詩なんだろうけど、恥ずかしながら初めて知った。
字面から「涙さしぐみ(作者は自分の故郷に)帰って幸いを見つけられた」んじゃーないかな、と思ったら、全然違ってた。
答えをみたら、ドリルには不親切に解説が全くなかった。この詩が載ってる教科書を読んでる児童向けの問題なんだろうなきっと。うちの子の教科書には載ってなかったからネットをあさって現代語訳を息子とたどった。青字は私なりのまとめ。間違ってるかもしれない。原文が読みこなせる人に教わりたい。
山のあなたの空遠く
→山のかなたの空遠くには
「幸」住むと人のいふ
→楽園があるらしい
ああ、われひとと
→ああ、(いろんな)ひとたちが
尋めゆきて
→楽園を探しにいった(けど、なくって)
涙さしぐみ
→涙がわいてきて
かへりきぬ
→(しかたなく)日常に帰った
山のあなたになお遠く、「幸」住むと人のいふ
→もっと山のかなたに行けば、楽園があると人はいう
どうやらちるちるみちるの青い鳥のような詩らしい。
「山のあなた」は→「山のかなた」 なのか。山にいる誰かにむけてる思いかと思った。
夫のことを「あなた」と読んでる妻は今は少なさそうだけど。「あなた」にはそういう意味もあるのか。現代語訳がなんとなくわかったけれども、これ先生はどんなふうに小学生に教えてるんだろうな。小学生にわかるのかな…。
ここんとこ仕事で腐ってたけれど、私はおおむね「幸」だな、と思う。夫も私も仕事があって、息子は咳してるけど元気だし、友達ともうまくやってる。
そろそろ自分も人生折り返し地点にて、最近訃報を聞くことが多くて、体の変化も少しずつあり、「自分の死」を昔より身近に考えるようになった。いつか死んでなくなってしまうのは、あまり怖くない。ただ死ぬときに至るまでの苦痛が怖いのと、それがいつ来るのかがわからないのが怖い。
↑ 文学史に残って然るべき、珠玉の翻訳詩集らしい。
追記:こんな解釈を書いてるひともいて、なるほどなあ深いなあと思った。
山の向こうにある幸せとは、「未だ出会っていない将来の自分自身」のことです。
物理的な距離を移動するだけでは「未だ出会っていない将来の自分自身」には出会うことはできません。今の自分自身を越えて、また別の成長した自分自身と出会うことができてはじめて、幸せを見つけることができる、と人々は言っているのです。 山のあなた(カール・ブッセ) | 日出ずる国の特許事務所 ®